2016.08.12
後世に残したい風景「金津七夕」
"七夕"と聞くと仙台の七夕を思い浮かべる方が多いと思いますが、
角田にも仙台同様、長い歴史と伝統を誇る七夕行事が伝承されています。
それが「金津七夕」。
今年は旧暦の七夕にあたる8月6日に開催。
大切に受け継がれているお祭りの雰囲気を少しおすそ分けします。
日が暮れはじめた午後6時。美しい七夕飾りが彩る通りは歩行者天国に。
藤尾小学校の鼓笛隊パレードが祭りのスタートを飾ります。
沿道からはたくさんの声援が集まっていました。
「金津七夕」は角田市尾山の金津地区の伝統行事で、
その歴史はなんと藩政時代までさかのぼります。(なんと370年以上の歴史!)
厄災をはらい、その年の豊作や子どもの成長を祈願するものとして伝承されてきました。
「金津七夕」の特徴は子どもたちが中心となって行われているということ。
見どころは子どもたちが灯りのともった提灯を手に、通りを練り歩く行列。
行列といっても、ただ歩くだけではありません。
あたりが暗くなってきた19時頃、拍子木の音とともに、子どもたちの声が響いてきます。
子どもたちが歌っているのは「新古今和歌集」 におさめられている藤原俊成の和歌。
七夕の
とわたる船の 梶の葉に
いく秋かきつ 露のたまづさ
この和歌を唱和しながら、練り歩いていくのです。
行列の中心は中学生までの子どもたち。
昔は男の子だけの行列だったそうですが、少子化の昨今、
女の子や世話役の大人も列に加わっているのだそう。
独特の調子で響き渡る子どもたちの歌声は郷愁を誘うものがあります。
夕闇の中で光を放つ提灯の灯りはとっても幻想的。
電球ではなく、ろうそくを使っているので、やわらかく、温かみのある光に包まれていました。
七夕飾りや行灯もすべて子どもたちの手作り。
和歌や道具の作り方も、子どもから子どもへ受け継がれているのだそうです。
昔ながらの伝統的な七夕行事の特徴を今に残す「金津七夕」は、
平成9年に宮城県の無形民俗文化財に、
平成25年には国の選択無形民俗文化財に指定されています。
子どもたちの歩みを、目を細めながら見ていた地元の女性は、
「昔はもっとたくさんの子どもたちがいて、もっと賑やかだったのよ。
でも今年の子どもたちも元気に務めてくれて嬉しい。
町の宝ともいえるこの行事がこれからも続いていって欲しい。」
と語ってくださいました。
心から楽しそうに、一生懸命に参加する子どもたち。
そしてそれを見守り、影で支える大人たち。
思わず胸が熱くなります。
東北の有名な夏祭りのように、勇壮で豪華なものではありませんが、
町全体で愛され、大切にされているのが伝わってくる、穏やかであたたかなお祭りです。
いつまでも残っていってほしい、1日限りの夏の風景がここにあります。
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